2018.06.06

対談

「おいしい人生」の因数分解

2018.10.13開催 出口治明氏(APU立命館アジア太平洋大学学長)講演会【part3 ロングインタビュー後編】

「おいしい人生」の因数分解

2018.10.13 出口治明氏(APU立命館アジア太平洋大学学長)特別トークライブ ご案内

・プロローグ
 Part1. 「歩く人類の叡智」に、会いに行く
・ロングインタビュー「好きなように生きるのが、あなたがこれから食べていくためには欠かせない」
 Part2. [前編]学んで知るから、人生の選択肢が増える
 Part3. [後編]「おいしい人生」の因数分解
・イベント詳細
 Part4. 3分で人類3万年の叡智を伝える出口さんと、120分

インタビュー・構成:湯川カナ(一般社団法人リベルタ学舎代表)

「おいしい人生」の因数分解

湯川:
出口さん、こういうふうに私たちが生きている社会の事実を知ることもまた、「知識」なのですね。だとしたら、知識はやっぱり必要ですね。でも、知識を得て、それだけじゃいけない気がするんですけど、えっと、なんだろう?

出口:
ちょっと、因数分解しましょうか。たとえばここに、「おいしいごはん」と「まずいごはん」があるとします。湯川さんは、どっちを食べたいと思います?

湯川:
それはやっぱり、おいしい方。

出口:
では、「おいしいごはん」に必要なものは? 「目の前に夢のように素敵なパートナーがいること」とかは少し置いておくとしますよ(笑) まず、いろんな材料を集めてくることが必要ですよね。これが、知識です。でも、それだけでは足りません。その材料を、上手に調理できることも必要になります。それが「考える力」です。

湯川さんは、「ムール貝」と「にんじん」と「ラーメン」は、知っていますよね? 誰でも知っているんですよ。でもソラノイロというラーメン屋さんの店長の宮崎さんだけが、これを組み合わせて「ベジソバ」をつくった。ミシュランにも載っています。つまり、「知識」×「考える力」が、おいしい人生には必要なのです。

この「考える力」を、最初にご質問のあった「教養」といってもいいですし、「リテラシー」と言ってもいいかと思います。

湯川:
なるほど! 知識と、それを使うための力。「編集力」と、私たちが言っているものかもしれません。

出口:
はい、おそらく同じだと思いますね。(ニコニコ)

動物としての不自然さが、社会のゆがみを生じさせる

湯川カナ(以下、湯川):
でもね出口さん。いまの学生さんたちと話していると、たとえ本人たちが「自分はこう生きたい」と、たとえば小さな会社に就職するとか、あるいは外国行くと言っても、親が止めることが多いんですよ。「いいから、ともかくまずは安定した会社に入って、安定した生活を」って。それで、就活サイトのトップページにある、名前の一部に有名企業が入っているけど実はほとんど下請けみたいなグループ会社への就職を薦めたりする。

出口治明氏(以下、出口):
本当ですか? だって有名な会社は、いまがピークということでしょう。そうだとすれば、これから先は落ちる可能性が大きいということですよね。最近では東芝の例もありましたが。ちょっとニュースを見ていれば、そんなこと、当然の事実ですよね。親御さんに、そう言えばいいですよね。もう少し勉強してよ、と。今がピークの会社より、これからピークに向かうベンチャーの方が面白いとは思いませんか、と。

たしかに、親の意識を変える必要はあるのかもしれません。とくにニートが問題となる日本では、こどもに依存する親が多いのかもしれませんね。これ、動物で考えると、おかしいことに気づきませんか? 動物は、こどもが成長したら、巣から追い出しますよね。それをしないという「動物としての不自然さ」が、社会にゆがみを生じさせているように思います。

湯川:
精神的にも束縛しちゃうというか……。大学生の親といっても私と同世代、40代なんです。なのにもう、自分が果たせなかった夢をこどもに託していたりする。でもいまや人生100年、親もなかなか死なんでしょう? 時間は十分にあるのだから、まずは責任をもって自分の夢にチャレンジしたらいいと思ってるんですよ、私。時代遅れの自分の価値観や、できなかった自分の尻拭いを押しつけるなんて、本当にこどもの命に失礼だと思ってて。

出口:
息子さんやお嬢さんを好きにさせてあげてください、と、僕も思います。親はこどもより先に死にますよね。そのときにどうするつもりなのでしょう? こどもを依存させている親を見ていると、こどもにしがみついて一緒に沈もうとしているのかと思いたくなるくらいです。親も、いまの社会のことを学びなおした方が良いですね。

努力は嫌い、とか、おいしいものは好き、とかね(笑)

出口:
エジプトのカイロに、世界一古い大学の1つと言われるアズハル大学があるんですが、ご存知ですか? ここの3信条というのが、僕は大好きなんですよ。それが、「入学随時」「受講随時」「退学随時」。つまり、「わからんことあったらいつでも学びに来てください」。これが大学の本来の姿だと、僕は思っているんです。

日本では企業が「1浪1留限定」なんてバカなことを言うから、大学で25歳以上の学生は2%もいません。外国では20%以上です。社会に出てから、学びにくることも多い。経験の差があるいろいろな学生が、「勉強したい」というただひとつの共通項のもとにあつまって、政治や経済がどうあるべきかなど同じテーマについてディスカッションするから、お互いに発見があるんです。学びの場はそうでないと、と思いますね。ダイバーシティです。

湯川:
あ、だからいまAPU(立命館アジア太平洋大学)さんにいらっしゃるんですね! さきほど学生さんが案内してくださいましたが、学生の約半数が外国からの国際学生で、毎年100ヵ国前後から来られていると聞きました。

出口:
はい、「混ぜる教育」です。教育には、ダイバーシティーが、欠かせません。人間の見方には、誰でも癖があるでしょう。だから、いろんなひとがいて、それぞれものの見方が違うことを知ることが大事なんです。3人友達がいれば、3通りの見方を知ることができますよね。その積み重ねで、視野がひろがり、俯瞰する力、本質を見る力が養われることになります。

たとえばね、すこし下品なことを言いますよ。わかりやすい例でいいますと、女性の、どの部分を素敵と思うのかというのも、世界中の男性の中では個人差があり、そして地域差があるでしょう。それを知るのと知らないのとでは、女性という存在の捉え方が、まったく違ってきますよね。

湯川:
たしかに! スペインではタラコ唇に整形しますし、ブラジルではお尻を整形する。日本では豊胸が多い。これ、女性としても、「『胸が大きい方が良い』というのは日本の一部の男性の視点に過ぎない」ってわかると、だいぶきもちが楽になります。そっか、異文化を知ると、どれがローカル・ルールで、本質的ではない部分なのかが、よくわかりますね。

出口:
そうして本質がわかると、自由になるでしょう? いろんな物事を知ると、相対化ができるので、圧倒的に世界が単純に、シンプルになります。人間って、「コモン」(共通)の部分が圧倒的に多いんですよ。努力は嫌い、とか、おいしいものは好き、とかね(笑) 「コモン」というのは、すなわち「好き」ということ。人生どうせ一度きりだったら、好きなように生きたいと思いませんか?

湯川:
あ、だからやっぱり、知識と教養だ! 自分が好きに自由に生きるために、これからの時代を生き延びるために。

「人間は基本的にアホなんです」

ここで、今回のインタビューは時間切れとなりました。
「人・本・旅」で知識を得る。視野が広がるから、人間という存在の本質がわかる。ルールや本質がわかるから、人生がシンプルになる。シンプルになるから、「余白」がいっぱいできて、自由に生きることができるようになる。……うーん、このこと自体が、なんて本質的でシンプル! 出口さんとお話したあとは、いつも元気になります。

ちなみに、上記は、90分のお話を再構成したものです。残念ながらカットしたたくさんの部分も、すべて、珠玉の言葉。なんせ、3分で人類3万年の叡智を伝える方です。90分なら90万年、って、もう人類史を超えて動物の歴史に入ってますね(いや、本当に動物の話も出てきましたし。日本史の本もビッグバンから書き起こす方です)。

ぜひ7月7日、神戸での120分間、出口さんの“生の言葉”を、漏らさず聞いてみてください。あなたの人生が、きっと、よりシンプルに、力強くなります。そう、どうせだったら、好きなように生きていこうぜ!

編集部

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神戸でなりわうPROJECTの編集部による記事です。

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