2017.08.04

なりわいを考えるシリーズ

神戸イメージにフィットするのは偶然か、必然か。
それとも戦略か。〜六甲バター〜

神戸イメージにフィットするのは偶然か、必然か。それとも戦略か。〜六甲バター〜

みなさーーーん。Q・B・Bベビーチーズってご存知ですか?ご存知ですよね!おやつにもおつまみにも、朝ごはんにも、関西の食卓にきっとよく出てくるであろう、お馴染みのあれです。今回は、あのQ・B・Bのチーズをつくっている、六甲バター株式会社の塚本専務にお話しをうかがいました!

「スティックチーズっていう…これを作ったのは世界でうちだけです」

多鹿:わたし、QBBチーズ毎日食べてるんです。冷蔵庫に常備してて。でも、実はプレーンしか食べたことないんです。

塚本:それはもったいない。たくさん種類があるのに。

多鹿:近くのスーパーではいつも3種類しか置いてないんですが、なにがあるんでしょうか?

塚本:もう、ありすぎて思い出せない(笑)。今売っているのは、9種類。アーモンドと、カマンベールと、スモーク、カルシウムとか。

多鹿:そんなにたくさんあるんですね。最近の新しい味は?

塚本:胡麻。でも内部事情をお話しするとあまり売れていなくて…

多鹿:胡麻ですか。確かに、私も買うならやっぱりプレーン選びます。挑戦より安定を求めちゃいますよね。他に過去に出したものは?

塚本:山ほどありますよ。それこそ、本当に思い出せない(笑)。期間限定のものも出していて、マスタードアンドチョリソーとか、サラミアンドバジルとか、アンチョビとか。

多鹿:なるほど。

塚本:QBBは、他のシリーズもたくさんあるんですよ。大きいスライスチーズはご存知ですか?

多鹿:知っています知っています!あの食パンにぴったりはまるやつですよね。普通のスライスチーズだと端のほうがあまってしまうけど、あのスライスチーズだとあまらない。

塚本:そう、そう。ちなみに、普通サイズの個包装のスライスチーズも、今では当たり前ですが、昔は当然ながらなくって。六甲バターがはじめて売り出したんです。

多鹿:あの四角のチーズを!

塚本:あと、今では結構衰えちゃいましたけど、スティックチーズっていうソーセージみたいなチーズもうちの大切な商品で。年齢が上の方はご存知だと思うんですが、これを作ったのは世界でうちだけです。

多鹿:すごい! チーズの新しい文化を六甲バターさんが生み出してこられたんですね。六甲バターは、チーズだけを製造されているんですか?

塚本:ナッツやチョコレートなんかも売っていますよ。今は90%がチーズを占めていますが。

「海外の文化と違和感なく接することができたり、新しいものを取り入れたいっていう気質とか…」

多鹿:一番の疑問なのですが、こんなにたくさんチーズを生産されているのに、どうして社名は六甲チーズじゃなくて六甲バターなんでしょう?

塚本:実は、六甲バターはもともとマーガリン、昔でいう人造バターを作っていた会社だったんです。

多鹿:戦後を勝手にイメージすると、マーガリンというのは日本で相当珍しかったと思うんですが。

塚本:創業者である祖父が戦前はイギリスの商社に勤めていて。通訳も多少できて、海外との繋がりがあったんですね。で、戦後「これからは食べるもので人を元気づけたい」と思ったんそうなんです。当時、一般的に栄養がまだまだ足りてない時代で、とにかく栄養があって、人に喜ばれるものは何かっていうことで、マーガリン。

多鹿:なるほど。おじいさまは外国との繋がりがあったからこそ、当時最先端のマーガリンに目を付けることができたんですね。

塚本:そうですね。今でも、よく目を付けたなと思います。いいものを残してくれたなって。

多鹿:そこから、どうしてチーズにシフトしていったんでしょう?

塚本:うちは、そもそもマーガリンという新しいものに目をつけて会社を立ち上げたわけで。常に新しいことをやっていきたいという風土があった。マーガリンだけではなくて他のこともやってみたいという中で、次に目を付けたのがチーズなんですね。

多鹿:神戸といえば 、港町、舶来文化、スイーツ、それから六甲山があって、六甲山牧場があって。そう考えると、商品といい、六甲バターという社名といい、なんだかすごく神戸のイメージにフィットしているように思うんですが、これって意図的なんでしょうか。

塚本:うーん、難しい質問ですね。でも、海外の文化と違和感なく接することができたり、新しいものを取り入れたいっていう気質とか、そういうものがあって、必然的に神戸の街にフィットしてきたのかも。どちらかと聞かれれば、必然です。戦略ではないです。

多鹿:必然。

塚本:この町の持ってる地理的な特殊性を考えると、じいちゃん船にも乗ってたりしてそういう関係が始まったわけですし、ここ何がいいって、港が近いので、原料チーズの買い付けがやりやすかったりするわけです。でまあ、少なくとも、この町が港町ということは六甲バターがいろんなことをやる中で重要なファクターになっているとは思いますね。

多鹿:これからも神戸でやっていかれるんでしょうか?

塚本:絶対とはいえません(笑)。でも、神戸は私たちにとって居心地がいいと思います。今までもそうでしたし、私はこれからも神戸がいいなと思っています。会社から海が見えるんですよね。坂があるのが神戸らしいと思っていて。その風景が好きですね。今のところちょうどいい場所なんじゃないかなと思っています。

「面接でマラソンの速さをアピールしてきた新入社員もいましたね」

多鹿:神戸でさまざまな活動にも取り組まれていますよね。

塚本:神戸にいますので、できる限り神戸でいろんなことをやってみたいなと思っています。大きなところでいうと、神戸マラソンのスポンサーをさせてもらっています。その際に、マラソンレシピブックというものを作って、ランナーの方にお配りすることもやっていて、これは神戸学院大学の学生さんと一緒に作っていますね。

多鹿:マラソンレシピブック?

塚本:もともと、走った人にチーズをお配りするとかはしていたんですけど、もうちょっとなにかできないかと。で、走る前や走った後に身体のケアをしていただくためのメニュー提案。

多鹿:ランナーの方への愛情が感じられます。

塚本:そういえば、神戸マラソンから六甲バターを知って、面接でマラソンの速さをアピールしてきた新入社員もいましたね。

多鹿:へー!そんなことがあるんですね。

インタビューさせていただいて、塚本専務自身の神戸への愛着を感じました。「神戸ではなきゃいけない」という明確な理由はないかもしれない。でも「神戸がちょうどいい」。私たちにとって故郷が居場所であり、理由はなくとも帰りたくなるように、六甲バターにとっても神戸が居場所であり、自然と神戸とともに年を重ねてきたのだと感じました。

戦後、時代が流れても、神戸には変わらないものがある。外から人や文化がやってきて、それらを上手に取り入れる気質は、港町にずっと根付いてきたものだと思います。六甲バターも「今あるものをよりよくしたい」「新しいものを創り出していきたい」と、マーガリンからチーズへ、ひとつのチーズから多様なチーズへ、変化してきました。そして、神戸の人のために、目の前の人のために、という想いが、結果的に神戸という街にフィットしていったのかもしれません。

本社近くのバスの停留所には「六甲バター前」とあります。昔も今も変わらず、地元の人々の傍に六甲バターがあるということがよくわかります。

編集部

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神戸でなりわうプロジェクトの編集部が作成した記事です。
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