2022.01.28

なりわいを考えるシリーズ

防災。答えのない問いに答え続けること。

防災。答えのない問いに答え続けること。

2022年10月、全国の公務員をはじめ、地域防災の担い手や民間企業の方、学生が有志で参加するコミュニティ「よんなな防災会」の発起人である竹順哉さんが弊社に来訪してくださる機会があった。神戸で開催される「ぼうさいこくたい2022」に参加するために来られた際に、立ち寄って下さったのだ。

 

「仕事も防災、プライベートも防災なんですよね。仕事でできないことをプライベートでやってます」
と話す竹さん。現在、気象庁で働いている。

 

「気象庁に入庁し、3つの部署を経験しました。キキクル(大雨・洪水警報の危険度分布:大雨による災害発生の危険度の高まりを5段階に色分けして地図上に示す情報)を担当する部署に在籍していたときに平成30年7月豪雨が発生し、200名以上の方が亡くなったんですよね。自治体からの避難勧告や避難指示は出ていたんです、それでも」

 

これだけの情報社会においてなお、これだけの人命が気象災害で失われたという現実。地球環境も人々の暮らし方も大きく変化する時代、人命をどう守るかはますます大きな課題として私たちに迫ってきている。

竹さんが「よんなな防災会」を発足させたのは、平成30年7月豪雨の翌年である令和元年10月。

「よんなな防災会を始めたことで自治体の職員と話すことが増えて、東京で仕事しているだけだと気づきにくい視点や分からないことがあることに気づきました。逃げたくても逃げられない人がいる、「空振りを恐れずに避難指⽰を」というけれどそのための準備も必要であったり、そう簡単にはいかない事情があったりする、空振りが多すぎるとおおかみ少年になる可能性がある、災害が少ない地域だから防災意識があまりない……、そんな現場の声を聞き、「国の施策のなかには地域の実情を踏まえた施策になっていないものもあるのではないか」と考えるようになりました。また、災害は全国各地どこでも起きうることから、国の機関で防災に携わりたいと思い働いていますが、国の施策を地域で形にして住民に届けるところにも携わりたいと考えたこともあります。しかし、現在の立場では仕事としては関われません。よんなな防災会には全国各地の地域で防災の活動をしている人がたくさん所属しているので、そのような人たちと意見交換・情報交換などをすることで間接的に地域の防災に関わることができていると感じています」

 

振り返って自分のことを思う。「防災」について何かを言おうとすると、詰まってしまって言葉にならない自分に気づく。
「自ら備えるべき」
「助け合うべき」
「適切に救助すべき」
そんな正しさの狭間に、思考が絡め取られる。圧倒的な自然の力を前に、足がすくむ。

 

「大学では土木の研究室に所属してました。気象災害で亡くなる⼈をゼロにしたいと思っていて、どこに所属すればそれを実現するためのアプローチに携われるか考えたとき、気象庁に所属すれば自分が考える気象災害ゼロに向けたアプローチに携われると思ったんです。気象庁が発表する防災気象情報によって、命だけは助けられるのではと思っていたんですよね」

「防災情報の精度や内容の向上も重要ですが、地域の実情をしっかり把握し、様々な観点でアプローチしてくことが必要だと思っています」

 

竹さんは絶望や無力感をどれだけ感じてきたのだろう。もしかしたら私は、絶望や無力感に向き合うことから逃げているのかもしれない。そんなことをふと思う。

防災には答えがない。平時も含め、刻々と変わり続ける状況を前にして、いかにして生き延びるかが問われ続ける。そこで問われるのは「正しさ」ではなく、やはり「自分がどうするか」なのかもしれない。答えのない問いに自ら行動し、答え続けようとすること。もしかしたらそれが、防災であり、生きていくということなのかもしれない。淡々と語る竹さんの言葉に、そんなことを考えた。

 

よんなな防災会

竹順哉さんが発起人を務める。全国の公務員はじめ、地域防災の担い手や民間企業の方、学生が有志で参加している。よんなな防災会では、防災・減災をキーワードとした、勉強会や交流会等をおこなっている。

よんなな防災会HPはこちら:https://47bosaikai.com

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