2018.06.06

対談

学んで知るから、人生の選択肢が増える

2018.10.13開催 出口治明氏(APU立命館アジア太平洋大学学長)講演会【part2 ロングインタビュー前編】

学んで知るから、人生の選択肢が増える

2018.10.13 出口治明氏(APU立命館アジア太平洋大学学長)特別トークライブ ご案内

・プロローグ
 Part1. 「歩く人類の叡智」に、会いに行く
・ロングインタビュー「好きなように生きるのが、あなたがこれから食べていくためには欠かせない」
 Part2. [前編]学んで知るから、人生の選択肢が増える
 Part3. [後編]「おいしい人生」の因数分解
・イベント詳細
 Part4. 3分で人類3万年の叡智を伝える出口さんと、120分

インタビュー・構成:湯川カナ(一般社団法人リベルタ学舎代表)

「いままでの日本では、それで良かったのかもしれません」

湯川カナ(以下、湯川):
出口さん。「教養」って、何のために必要なのでしょうね? なくても生きていけますし。だって、「知識を学ぶ」って、まあまあ面倒臭いじゃないですか。

出口治明氏(以下、出口):
それはやはり、「好きなように生きるため」と、違いますか。たとえばスキー場へ行ったとします。スキーを滑ることができれば、滑って楽しむことも、見て楽しむことも、自分で選ぶことができますよね。でも、考えてみてください。もしスキーの滑り方を知らなかったら? 見ることしかできません。

それと同じように、何をするにも、「遊ぼう」と思ったら学ぶしかないんです。学んで知るから、人生の選択肢が増える。そして、たくさんの選択肢の中から選ぶことができるから、好きなように生きることができる。人生どうせ一度きりだったら、好きなように生きたいとは思いませんか?

湯川:
んー、わかる気もするんですけど、でも実際には「自由に生きるために面倒臭い思いして学ぶくらいだったら、何も学ばないで楽して生きていきたい」って、言われることがあるんですよ。これは働き方でも同じで、「指示された通りに働いて楽して生きたい、自由は要らない、それが私の『好きな働き方』なんだ」、って。

出口:
たしかに、いままでの日本では、それで良かったのかもしれません。戦後、日本の産業を支えてきたのは、製造業でしたよね。製造業の基盤となるのは、工場の機械です。機械は疲れませんから、当然、24時間稼働させるのがいちばん効率が良い。

でも、人間は疲れますよね。だから、人間にできるだけ機械に合わせて長時間労働をさせるために、子羊のように黙って働く男性を雇用し、疲れて帰ってきた男性の世話をさせるために専業主婦をつくった。それが、社会全体が成長するためにもっとも効率的な方法だったからです。そうして、ほとんどのひとが「自分の好きなこと」を考える暇もなく、死んでいった。でもそれは人間の歴史ではごく普通のことなので、とくに問題視する必要もなかったのです。

湯川:
だけど、その時代は終わってしまった。

「あなたがこれから食べていくため」に

出口:
成熟社会に入ると、モノはもうあふれているでしょう。サービス産業の時代になると、アイディアの勝負になってきます。ベルトコンベアーは何も新しいことは考えてくれませんから、人間が考えるしかない。ただ、「考える」ときの人間の頭は、単純作業よりも、はるかに疲れます。人間の脳は、だいたい体重の2%くらいしかないのに、消費するエネルギーは20%。頭を使う仕事の場合、長時間労働して帰宅して「飯、風呂、寝る」の生活では、なかなか回復しません。

それに、アイディアって、脳に刺激を与えないと出てきませんよね。なので「ヒト、本、旅」。人と会って語らい、本を読み、旅をする、そういう時間が必要になってきます。

湯川:
あ、ひょっとしたら、それがいま「働き方改革」というかたちで言われていることの本質だ! 「長時間労働がいけない」のではなく、あくまで、「長時間単純労働では、もう食っていけないよ、いまからは生きていけないよ」、ってことですか?

出口:
そう。朝から晩まで何も考えずに頑張って働いたら給料がもらえた製造業の工場モデルの時代は、もう終わったんですね。ものすごく簡単に言いましょうか。産業構造が変わるということは、社会のルールも変わるという意味なんです。サッカーでも何でも同じで、ゲームのルールを知らないと、そのゲームをプレーできないでしょう? いわば日本は、野球(工場モデル)から、サッカー(サービス業中心)に変わったのです。

製造業のウェイトは1/4を割り込みました。これからの日本を支えるサービス産業は、アイディアを必要とします。そしてアイディアというのは、好きなことをやることからしか生まれませんよね。なので、好きなように生きる、好きなことをして生きるというのが、「あなたがこれから食べていくため」に、欠かせない。このことが、いま僕たちが生きている社会のルールに、すでになってしまっているのです。

編集部

user

神戸でなりわうPROJECTの編集部による記事です。

ページトップヘ