2021.01.04
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自分だけでは辿り着けない場所へ 〜なりわいカンパニー SDGsワークショップ レポート〜
文:桂 知秋
Sustainable (持続可能な)Development(開発) Goals(目標)。持続可能な開発を意識しなければいけない、という問題に世界が直面している中、国連がとりまとめた17の目標である。確かに、成長一辺倒の時代は終わったことは実感できるし、環境問題や貧富の差も身近な暮らしに関わってきている今、なにもかも国任せにするのではなく、個人や企業も「持続可能」のために、SDGsに取り組むべきなのはうなずける。
とはいえ、実際にどうやって取り組んだらよいのか?というところで手が止まってしまうことも多いのではないだろうか。そこで、なりわいカンパニーが提唱する「クロスパートナーシップ(※)」を活かしたワークショップを企画。まずは自分たちで体感すべく、2021年11月14日に実施された。
まず大事なのは「自分がどこへいきたいのか」
SDGsへの取り組みが難しい点として、個人や各企業にとって、目標が壮大すぎてとっつきにくいということもあるのではないだろうか。実際に、この日集結した、企業、行政、学生など様々なバックグラウンドの参加者たちも「自分にとってSDGsって?」という質問には「実現したくてもできない」「日常生活とあまり関係ない」という声が多数だった。
では、10年後の2030年、自分がどんなふうに働いてたら幸せ?と聞かれたらどうだろう。「時間と場所を自由に働いている」、「子供との時間を大事に」、「大自然の中にいる」、「朝はゆっくりしたい」、「人と会うリアルな場を大切にしたい」等々、リアルな答えがたくさん。社会がどうなっているかはわからないけど、自分自身の理想の姿はそれぞれにあるのだ。そこから、「なぜ今できていないのか」という現状に目を向け、「どうやったら実現できるか」アイデアを考える。「課題解決」の思考法では、見つけた課題を解決したところで、理想の自分にたどり着けるかどうかは分からない。そうではなく、このワークショップで大事なのは、「自分がどこへいきたいのか」。SDGsのように、大きな主語で語られがちな社会的問題も、自分ごとに捉え直すのがなりわいカンパニー流なのかもしれない。
企業、行政、農家、学生など多様なバックグランドの約30名が参加。
10年後、どういう自分だったら幸せなのか、各々が書いてみる。
他者との協働で見えるもの
では多様な立場の人々が、それぞれバラバラなビジョンを掲げたときに、それをどうやって実現したらいいのだろう?それが、SDGsでも16のありとあらゆる目標を実現するための「方法」として最後の17番目に掲げられている「パートナーシップで目標を達成しよう」であり、このワークショップのもうひとつの大きなポイントである。立場や考え方が違う人間同士がチームとなり、意見をすり合わせながらひとつのビジョンを作り上げ、実現に向けてアイデアを練る。もちろん、それは言葉で言うより難しく、共通言語を探すのに苦労したり、あちらを立てればこちらが立たない場面に出くわすことも。ただ、視点の違う他者との協働を通して、自分だけでは見つけられなかった解決策を見出したことで、納得の表情が多く見られたのも事実。きっと、「上から降りてきたビジョンを実現しなければ」という義務感とは全く違い、主体的に他者とのパートナーシップに取り組んだことで、新しいアウトプットが体感できたからではないだろうか。
チーム作業へ。まずはそれぞれのビジョンを「お金」「体」などのキーワード別に書き出していく。
各個人の理想の形をチームでひとつのビジョンにして発表。
立場が違うから思いもよらない意見も。だからこそ、一人では見つけられないアイデアが生まれる。
明日から動ける。
最後に参加者ひとりずつが、チーム作業を経て考えた「私は明日から〇〇をやります」を発表。
企業の「持続可能」のためにも。
SDGsが大事と分かっていても、企業や団体としてのビジョンを掲げるだけでは、実際なかなか動かないもの。しかしこのワークショップでは、各参加者がSDGsの「そもそも」を捉え直し、自分ごととして落とし込んだ上で、他者と協働しながら、実現まで少しでもたどり着けるような手がかりを見出したのではないだろうか。それは、企業自体の「持続可能」を考えたときも同じかもしれない。いくら企業が事業計画を掲げても従業員が主体的に取り組まなければ意味がない。社内のチーム内や企業外の違う立場の人々と協働できなければ、ニーズが多様化していくこれからの時代に新しい価値は創造するのは難しいだろう。このワークショップで体感した協働や自律的な視点こそが、SDGsはもとより、企業の持続可能も支えていくことができるかもしれない。
参加者の感想
- 上司からSDGsで何か…と言われてやるより、自分で考えて動くほうがいいなと思いました。(公務員)
- チーム内で、問題点は同じでも解決策が全く違うアイデアだった。視点の違う人と話すことが刺激になった。(会社員)
- 漠然としか考えたことがなかったけど、明日から自分はこうしよう、という決断にまでもっていくことができた。(自営業)
- 国が言っていること、くらいの認識しかなかったけれど、地に足つけて自分たちが取り組んでいかないといけないことなんだと自覚できた。(会社員)
- SDGsというと自分の興味のある食のことしか考えてなかったけど、働き方にも関わってくるのだと知ったので、自分の働き方を見つめたいと思った。(大学生)
- 自分を変えること、小さなことから変えることが重要だと思いました。(公務員)
(※)クロスパートナーシップとは:
SDGs17ゴールは、「16の目標+1つの方法」で構成されます。
なりわいカンパニーは、16の目標を達成するために欠かせない方法として明記されている「17番・パートナーシップ」に注目。
産学官民・経営者と社員・世代差・ジェンダー……様々な枠組みを超えて、ともに未来をつくろうとする関係性を<クロスパートナーシップ>と呼ぶことにしました。
誰もが当事者となれるクロスパートナーシップが、SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」世界を実現すると考えています。
桂知秋CHIAKI KATSURA
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