2018.02.16

なりわいを考えるシリーズ

みんないつでも帰ってこれる場所を求めている(シェアハウス『和楽居』経営 井上考史・いのじさん)

みんないつでも帰ってこれる場所を求めている(シェアハウス『和楽居』経営 井上考史・いのじさん)
神戸市垂水区で7軒のシェアハウス『和楽居(わらい)』を経営されている井上孝史(いのじ)さん。住人自らが無垢の木と漆喰を使ったリフォームを行ったり、シェアメイト同士が本音で語り合える、家族のような関係作りを目指しながら経営されています。シェアハウス『和楽居(わらい)』がなぜこの垂水の地で愛されるのか。その秘密を知りたくてお話を聞きに伺いました。

 

「シェアハウス『和楽居(わらい)』は2008年にスタートしました。元々ここは僕の実家で、3世帯8人で住んでいたのですが、家族が入院などをしてしまい、23歳の時に僕と犬だけになってしまったんです。僕は大阪に就職が決まっていたので、どうしようか、と悩んで。そんな中家の維持や犬のめんどうをみながらこの家に住んでくれる人を募集したのがきっかけでした。まさかその時はシェアハウスが自分の『なりわい』になるとは思ってもいませんでした(笑)」
キッチンでヨモギ茶を煎れながら
キッチンでヨモギ茶を煎れながら

「数年間は働きながらシェアハウスを経営していたのですが、軌道にのってきたので、シェアハウスを増やしていくことを決め、今は7棟経営しています。昔から人を集めて幹事したりすることは好きでした。自営業もイメージをしていて、始めた当初から何かを買ったりするのではあれば、顔が見える人、自分の知っている人、地域の人にお金を払いたいという気持ちがずっとありました」

―シェアハウス『和楽居』が他のシェアハウスと違うところはどこでしょう?―

「基本的には誰でもウェルカムなんです。色々な人が住んでいます。年齢制限も設けていないので、例えば北海道から55歳の人が入居希望で見学に来たりします。自分の身の回りのことができて、コミュニケーションがとれれば年齢は関係ないとしているんですよね。カップル、夫婦や家族で住んででる人もいます。全国を旅していて、たまたま『和楽居』に泊まって気に入ってしまい、最後には住み始めたなんて人もいるんですよ」

庭で飼っているめんどりたち
庭で飼っているめんどりたち

―垂水のいいところはどんなところだと思いますか?―

「街の人が優しいっていうか。ほどよく田舎でほどよく都会でほどよく自然もあって。東日本大震災のあと、このあたりでもお店に水がなくなったりしたことがあったんです。でも明石まで行くと亀の水という水が湧いていたり、魚も海に行けば釣ることができる。果樹もあるし、野草もある。それを自然からいただけるっていうことを日々の生活の中で感じていたら、僕の中で自然がまず綺麗じゃないと、野山が綺麗じゃないと、という風に考えるようになってきたんですよね。自然の恵みを自分の手でもらったりしていると、よりそういった意識が出てくるんじゃないかな、と思います。垂水なら田舎まで行かなくても、そういう自然への感謝の意識を持っていけるやん、という」

―最後に今後こんなことをしてみたいということはありますか?-

「シェアメイトと心を大切に、気持ちを大切にしていける仲間でありたい、本心が出せる関係性だったらいいなと考えています。そこをもっともっと深めていきたいなぁ、と。あとは満室にすることですかね(笑)。」

「『和楽居』が地域の人にもっと愛される場所になりたいなと思っています。今年ここで餅つきをしたら、70人を超える人が来てくれました。近所の人がもっともっと参加してくれるといいな、と思っています。舞子のシェアハウスでは、近所の人を呼んでバーベキューをしたりもしています。地域の人たちともそういう関係を築いていきたいですね」

 

「実はここのキッチンを12月の半ばに二層式にする予定なんです。それで飲食店営業の許可を取って、将来カフェを開きたいシェアメイトが1日カフエをしたり、あと親子食堂とかもやってみたいですね。どんどん可能性が広がるので楽しみです。『和楽居』がみんなにとっての居心地のよい、いつでも帰って来れる場所になれたらいいな、と思っています」

笑顔で『和楽居』のシェアメイトや訪れた友人の話、近所の人たちとのエピソードを語ってくれたいのじさん。「基本的にどんな人でもウェルカムなんです」という言葉に象徴される通り、シェアハウス『和楽居』は垂水という場所で多様な人たちを受けとめる大きな器になっている。今の時代、みんないつでも笑顔で帰れる場所を求めているんだな、と感じました。地域とつながり、人と繋がり、顔が見える関係の中から「なりわい」を紡いでいく。シェアハウス『和楽居』のこれからが楽しみです。

野崎 安澄

NOZAKI AZUMI

愛知県在住の2男児の母。NPO法人セブンジェネレーションズ共同代表/愛知アーバンパーマカルチャー発起人。東日本大震災・福島第一原発の事故をきっかけに、子供達に7世代先まで環境的に持続可能な美しい地球と公正な社会を残すための活動をスタート。持続可能な環境・社会を作るためのワークショップやオンラインコースの立ち上げ・様々なコミュニティ運営を行っている。2020年は愛知で仲間達と本格的な米作り&畑もスタート。自分の人生を120%楽しみながらDEMOくらし編集部で編集/ライティングをしています。

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