2018.05.16

レポート

「なんでおいしくないの? ~紅茶の淹れ方あれこれ~」

「なんでおいしくないの? ~紅茶の淹れ方あれこれ~」

文:大野美紀子

「紅茶は好きだけれど、自分で淹れるとおいしくない」。

紅茶のインストラクターをしている私に、よく言われる言葉だ。おいしくないのは…いろんなタイミングのズレ!?茶葉やお湯の量、蒸らし時間…。あと、茶葉が古かったり、粗悪なものだったり。いや、もしかしたら、もっと、奥深い理由があるのかもしれない。

これまで、「おいしい(紅茶を淹れること)」だけを意識していた。しかし、それだけでは、一方通行。「おいしくない」にも、「おいしい」何かが隠れているような気がする。味覚は人それぞれ。同じものを口にしても、「おいしい」人もいれば、「おいしくない」人もいる。味覚から感性の情報検索ができるかもしれない

ということで、今回、「おいしく紅茶が淹れられない」と思っている5名の方に、いつものように紅茶を淹れてもらった。

(1)「もっとおいしく淹れたい」K・Mさんの淹れ方

①カップにお湯を入れて温める
②先にカップにお湯を入れてから、そっと、ティーバッグを入れる
③(ジャバジャバせず)しばらく待つ

ほぼ、パーフェクト。あとは待っている間、ソーサーをふたの代わりにカップの上にのせ、蒸らすと完璧。あとで、その淹れ方で飲んでもらったら、「より香りがする」と。香りもおいしい条件のひとつである。

なぜ、「もっとおいしく淹れたい」のか?
知り合いのティーインストラクターからもらったティーバッグがあまりにもおいしかったので、紅茶の味に目覚めたらしい。確かに、おいしい紅茶の条件に『良質の茶葉を使う』というのがある。ティーバッグは、1杯のカップに淹れることができ、茶葉のあと片付けも簡単という合理的に作られたアメリカ生まれ。味は二の次だったが、最近は、良質の茶葉で作られているものがある。そういうものはだいたい、メッシュのテトラ型のティーバッグやアルミ個包装のものが多い。ティーバッグだから「おいしくない」の決めつけは古い!?

紅茶を淹れる前に、用意したティーバッグの裏面に、「紅茶の淹れ方」に目を通してから始めたKさん。あとでそのことを聞いたら、なんでもまずはトリセツを読んでから使い始めるのだとか。小さいころ、ご両親が共働きで忙しく、新しいものを使うときはいつもトリセツと一緒に渡され、それを読んでから使うというのが習慣になったらしい。ご主人はその反対で、使っていくうちにわかるタイプ。それでもわからないときは、Mさんがトリセツを読んで教えているらしい。紅茶淹れ方ひとつで、性格が垣間見られるなんて面白い。

(2)「自信もって、まずい紅茶を作れます!」とにこやかに宣言したY・Mさんの淹れ方

①カップにティーバッグを入れて、上からお湯を入れる
②勢いよく、ジャバジャバとティーバックを振る

お母さんは忙しいので、待ってはられない
その宣言通り!?けれど、けっこう、こういう淹れ方する人いるのでは?紅茶の味が出やすいよう、振るためにあの紐があるのだと私もかつてはそう思っていた。時には入れっぱなしのこともあるとか。「その間、他の用事をしてたら、忘れることも多くて…。気がついたときは、もう渋い。なので、ミルクを入れるんです。そんなこんなで、まずいミルクティーを飲んでます♪」となぜか嬉しそうに話す。小さいお子さんがいる主婦は忙しい。蒸らす時間があったら、あれもこれもしたい。きっと、ゆっくりとお茶を飲む時間もないのだろう。こういう人にホッと一息つけるようにお茶を淹れてあげたい。

(3)「こんなもんかなぁ」と適当に淹れてくれたK・Mさんの淹れ方

①ガラスポットに、適量の茶葉を入れる
②目分量加減でお湯をポットに入れる
③蒸らす時間も時間を計らずに適当に待つ
④出来上がった紅茶をカップに入れる

適当は味が安定しない
「こんなもんかなぁ」と茶葉、お湯の量、蒸らし時間すべてにおいて、家庭料理を作るように適当。この適当さがたぶん、味が安定しないのだろう。今回は渋かったよう。次回はもしかして、奇跡的においしいかも。

(4)「私のは(味が)薄くて、旦那のは渋いって言われる」Y・Sさんの淹れ方

①人数分の茶葉をお茶袋に入れたものを、陶器のティーポットに入れて、適当にお湯を入れる
②蒸らし時間は適当で、そっとポットのふたを開けて、色で判断
③カップに注ぐと、色が薄かったようで、もういちど、ポットに入れなおす
④味が出るようにか、ティーポットを持ち上げてゆすっている
⑤ころ合いを見計らって、カップに注ぐ。色はバッチリのよう

1つのポットで違う味
飲んだら、薄かったようだ。2杯目のは渋い。先に、1杯目はカップに注ぎ、その間もポットに茶葉が入れっぱなしだから、2杯目は渋いに決まっている。「毎朝そうやねん。私のは(味が)薄くて、旦那のは渋いって言われる」んだとか。1つの同じポットに淹れているのに、夫婦で違う味の紅茶を毎朝飲む…面白い光景だ。二つのカップに、交互に入れて、味を均等にしたらいいのだけれども、そのままでもいいのかもしれない。この夫婦の味だから。また、今日も、「俺のは渋い!」と言われているのだろうか。

(5)「イタリアで飲んだ、激マズ紅茶をぜひ、飲んでもらいたい」M・Yさんの淹れ方

①まずはイタリアの水道水を再現ということで、イタリアの水と炭酸水で調合
②茶葉を茶袋に入れて、ティーバックを作る
③ガラスポットにティーバックを入れてからお湯を入れる
④しばらく待つ。ティーバックをお箸でギュギュっと挟んで、濃いい紅茶液をつくる
⑤温めたスキムミルクを入れる

紅茶の味がなく、もう別の飲み物に
何日前からイタリアで飲んだ、激マズのミルクティー味を再現しようと練習してきてくれた。スキムミルクの味に負けないように、濃いい紅茶液を作らないといけないから、箸でギュギュと挟む。それって、渋みを通り越して、エグミになる。ただ、まだスキムミルクの味が勝っていたのか、紅茶の味がせず、もはや、もう別の飲みものになっていた。激マズではない。本人も「こんなもんじゃないのよ。ゲロの味を超えて、どぶの味なのよ」と残念がって、いつかあの味をとリベンジ満々!?

5人の淹れ方を拝見して

人それぞれの紅茶の淹れ方を検証して、(5)のイタリアの激マズ紅茶を淹れてくれたMさん以外はそうさほど、淹れ方にびっくり!という方はいなかった。紅茶の色で判断していることとあとは適当。それだと味が安定しないということぐらいだろうか。そこに「おいしくない」につながっているのだろう。一番の収穫は淹れ方を通して、その人の性格や日々の生活が見えたことだろうか。紅茶のパックの裏面に紅茶の淹れ方に目を通してから始めた(1)のKさんの几帳面さ。ティーバックでの淹れ方がせわしなかったり、ほったらかしの(2)のYさんは小さいお子さんの育児や家事に追われている日々の生活なのだろう。(4)のYさんの毎朝の夫婦の会話、「私のは(味が)薄くて、旦那のは渋いって言われる」。これも、私は私、旦那は旦那というほほえましい夫婦像が見えた。同じ茶葉でありながら、淹れ方によってそれぞれの味・香りになる。人によって、こだわりがあるようで、適当なところもあり。それが不安定な味にもなったりする。それはそれで、その人の味(性格)となり、そこを知ることができただけでも私は面白かった。そして、その人の生活が少し垣間見れた。紅茶は日常生活のあたりまえの存在だから見えたのかもしれない。

あと、全体を通して、おいしくない紅茶を淹れることに、なぜかみんな楽しんでいた。「まずい紅茶(=リアルな自分の姿!?)」が「マズイわ!」とツッコむことでコミュニケーションを楽しんでいたのかもしれない。「おいしくない」も、実は、人を楽しませるツールのひとつかもしれない。

みきtea

miki tea

紅茶教室主宰、アロマセラピスト

神戸に生まれ、気がつけば半世紀…(笑)
どっぷり神戸にいながら、意外に神戸の魅力がわかっていない!?

あたり前のことが「実はそこが」神戸の魅力なんだということを
紅茶を通して、お届け出来たらと思います。

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